各国の対応
海外でのAMR対応
抗菌薬の開発スピードがしだいに遅くなり、薬剤耐性菌の脅威が指摘されるようになったのは1980年代以降です。米国疾病管理予防センター(CDC)は1995年に抗菌薬適正使用を訴えるキャンペーンを開始しました。当時は薬剤耐性菌といえば院内感染対策のみの問題と考えられることも多く、取り組みは病院内にとどまることがほとんどでした。
21世紀に入り、薬剤耐性菌がいよいよ大きな問題となり、動物や環境の関連も指摘されるようになりました。そのため病院内にとどまらず広く取り組む必要がでてきたのです。代表的な取り組みとしては欧州疾病予防管理センター(ECDC)による欧州抗菌薬啓発デーの活動があります。2008年から毎年11月18日を啓発デーとして幅広いキャンペーンを開始したのです。この活動は注目度も高く、世界各国がこの時期にキャンペーンを行うようになっています。英国の公衆衛生局が中心となって作成した教育用ウェブサイト(http://www.e-bug.eu/)を各国語に翻訳して提供するなど、国際的な取り組みも欧州諸国で一足早くはじまりました。
- 1995年
- 米国疾病管理予防センター(CDC)による抗菌薬適正使用を訴えるキャンペーンを開始
- 2008年
- 欧州疾病予防管理センター(ECDC)は毎年11月8日を欧州抗菌薬啓発デーと定める
- 2011年
- WHO世界保健デーのテーマに「薬剤耐性菌対策」
- 2015年
- WHO総会で薬剤耐性対策グローバル・アクションプランを発表
WHOは毎年11月8日を含む1週間を世界抗菌薬啓発週間と定める - 2016年
- 厚生労働省がAMR対策アクションプランを発表
世界的には世界保健機関(WHO)が2011年に世界保健デーのテーマを薬剤耐性菌対策としたことから注目されるようになりました。2015年にはWHO総会で薬剤耐性対策グローバル・アクションプランを発表して世界的な取り組みを進める方針を明確にし、加盟各国に2年以内のアクションプラン作成を求めました。この方針に基づき、日本を含めた世界各国がアクションプランを作成し、足並みをそろえて薬剤耐性対策を進めていくこととなったのです。WHOは2015年から世界抗菌薬啓発週間のキャンペーンも始めました。これは毎年11月18日を含む週を啓発週間とし、これに合わせてさまざまな取組みを行うものです。
このように薬剤耐性対策は日本だけでなく世界中の国々にとっても大きな課題となっています。国によって背景は違いますが、協力して取り組んでいく必要があるのです。