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薬剤耐性菌について

耐性化のメカニズム

2017年9月

 細菌は様々な方法を駆使して抗菌薬曝露から生き延びようと試みます。例えば、自身を覆っている膜を変化させて薬の流入を防ぐ(外膜変化)、細菌内に入ってきた毒を外に汲み出してしまう(排出ポンプ)、抗菌薬の作用点を変化させる(DNAやRNAの変異)、化学反応で分解してしまう(ベータラクタマーゼ)、バイオフィルムを形成するなどの方法があります。

薬剤耐性のメカニズム

薬剤耐性のメカニズム

 これらの耐性機構は細菌のDNAに組み込まれていますが、細菌のDNAには増殖に必要な情報を組み込んだ染色体上のDNAと、染色体外にあるプラスミドと呼ばれるDNAの2種類があります。薬剤耐性に関わる遺伝子はこのどちらのDNAにも存在し、例えば、黄色ブドウ球菌ではMRSAに関わる遺伝子は染色体上に、ベータラクタマーゼ産生に関わる遺伝子はプラスミド上に存在します。

 染色体上にあるDNA情報は、いわゆる“親から子へ”の形で、分裂の際に母細胞から娘細胞に伝えられます(垂直伝搬)。また、死菌などが残していったDNAをちゃっかり自分に取り込んでしまう方法(形質転換)、細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)を介してDNAを取り組む(形質導入)などの方法で、垂直伝搬以外の方法で新たに薬剤耐性を獲得することもあります(水平伝搬)。

 こういった形式の薬剤耐性獲得ももちろん問題ではあるのですが、プラスミド上にあるDNAによる薬剤耐性獲得は、より大きな問題となります。プラスミド上のDNAは生存に関わらない代わりに自由が効きやすく、「接合」という方法で同一種内や、なんと種を超えて他菌種にまで薬剤耐性情報を伝えることができます(水平伝搬)。たとえるなら、ソーシャルネットワーク上で情報が次から次へと拡散していくようなもので、プラスミド上に耐性遺伝子があると、薬剤耐性菌の拡散が非常に速くなることが想像できるのではないでしょうか。

 人的な要因で耐性菌を増殖させてしまうことがあります。その筆頭が抗菌薬投与です。薬剤耐性菌は耐性を得るため、本来の菌としての能力に何らかの代償を払っていることも多く、細菌叢の生存競争という意味では弱者であることも多いのです[1]。しかし、そこに抗菌薬という「選択圧」が加わってしまうと、薬剤耐性菌以外の細菌が減少し、薬剤耐性菌が増殖しやすい環境ができあがります(選択圧だけでなく、ベータラクタマーゼの過剰産生[2]やキノロンのDNA変異[3]など、抗菌薬曝露そのものが薬剤耐性獲得の原因となることもあります)。

 細菌は、本来もっている耐性のほか、遺伝子を拾ったり他の菌から譲り受けたりしながら高度な耐性を獲得し、そこに抗菌薬による選択圧が加わることで増殖し、ヒトからヒトへ、またはヒトから環境へと広がっていきます。

参考文献

  1. Moura de Sousa J, et al.: Multidrug-resistant bacteria compensate for the epistasis between resistances. PLoS Biol. 2017 Apr 18;15(4):e2001741. doi: 10.1371/journal.pbio.2001741. eCollection 2017 Apr.
  2. Jacoby GA: AmpC beta-lactamases. Clin Microbiol Rev. 2009 Jan;22(1):161-82, Table of Contents. doi: 10.1128/CMR.00036-08.
  3. Modern Media (0026-8054)53巻3号 Page74-79(2007.03)

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